この前はしいたけのだしについて調べてみましたが調べて行くうちに疑問に思ったことがあるのでまとめて調べてみました。
この前の話はこちらです。
出汁と言えば昆布と鰹節の合わせ出汁が一般的な家庭では広く使われていると思います。しかし、家庭ではあまり使わないかもしれませんが、しいたけの出汁も料理にはよく使われる出汁なので家庭では使用する機会が少ない、しいたけ出汁について[…]
考察
前の記事で生のしいたけは細胞が生きているためうま味が出ないと書きましたが生しいたけは調理などの工程で細胞を壊してしまえば、うま味であるグアニル酸を生成できますが干し椎茸のようにだしとして利用するよりも、しいたけ自体にグアニル酸が蓄積して具としての味が良くなるのでだしとしてうま味を外部に出すとは違う目的になってしまいます。
そのため、だしとして生のしいたけを利用するには調理前に細胞を傷つけて水に成分が溶け出しやすくする必要があります。そこで細胞を傷つける方法として冷凍を思いつきました。水は凍ると体積が増える性質があるので食べ物を凍らすと細胞内の水が膨張し細胞を破壊し、解凍後食感や味の変化が現れます。生のしいたけも冷凍すれば細胞が破壊され、結果グアニル酸を外部に出すことができるのかもしれません。
とりあえず例のごとくググりましたが、すでに誰かしらが大学で研究をされていたみたいで論文が載っていました。
それにはいろんなキノコを生から加熱するのと冷凍してから加熱するのとでは味に変化があるのかと書いてあり、味覚検査や数値での検査などのデータも載っていました。
結論を簡単載せますと
キノコ類は生から加熱よりも冷凍から加熱の方がグアニル酸が生成されうま味が上がっている。しかし色、食感が悪くなり(柔らかくなる)、種類によっては(しめじ等)は渋み出る。
この結果を見ると冷凍することにより細胞が破壊され、リボ核酸が外部に出やすくなりグアニル酸の生成がしやすくなったと言えます。
他にもしいたけのことも書いてあり、生のしいたけは水に12時間つけてもグアニル酸が全く出ないと書いてありました。これは細胞が生きているので細胞内のリボ核酸が外部に出ることがないためだと思います。(考えてみても水の上にしいたけが浮いているだけのような気がします。)
しいたけについてはこれ以上書いていなかったのですが実際に生のしいたけと冷凍しいたけではどのくらいの違いがあるのか気になりました。また生のしいたけではだしが出ないけど冷凍をしたらだしが出るのかも気になったので実験しました
冷凍
だしのことは置いておいて、きのこは冷凍してから加熱するとグアニル酸が増えるので美味しくなる、、、とは単純にはいかないようです。
(美味しいとはただうま味成分が増えれば美味しいというわけではなく人の五感を総合して美味しいと感じられます。)
きのこは冷凍するとうま味は増える(増えやすい)利点があるが、
欠点として色が悪くなりなり見た目が悪い。元から色が濃いしいたけ、しめじなどはどす黒いようになってしまい、えのきなどの白っぽいものは黄ばんだような色になってしまいます。炒め物に入れる場合はあまりよくありませんがもともと色の濃い煮物などではあまり欠点にはならないように思います。
次に食感が悪くなる。食感が悪くなるといっても豆腐のような変化はなく少し柔らかくなる程度です。えのきは特有のシャキシャキ感が少なくなりしめじはプリッとしか感じがなくなりますが鍋などに入れて煮込んだ後のような食感なので好みの問題でもあると思います。
最後に渋みが出る。これはしめじと舞茸が当てはまりますが細胞が壊れることによりグアニル酸の生成がしやすくなる反面、元から持っている渋みの出る成分も生成されてしまうからです。しめじは特に渋みが出ます。
ただ冷凍することの利点としてはまだあり、保存がききやすい。細胞が破壊されることにより味がしみやすくなる。味がしみやすいので煮物などは調理時間が短くなるなどです。
キノコの種類に応じで使い分ければ総合的に見るときのこは炒めたり、煮たりする場合は冷凍してから調理した方がうま味が増え、味も染みやすいので冷凍した方が美味しく出来上がるのだと思います。(しめじは例外、舞茸は場合による)
実験
調べることはこちらです。
A.生と冷凍では焼いたり煮たりするとどのくらいの違いがあるか。
B.生ではだじが出ないが冷凍をすればだしが出るのか。
A.生と冷凍では焼いたり煮たりするとどのくらいの違いがあるか。
焼き
形が比較的揃ったしいたけを買ってきます。同じような形と大きさのものをペアにして軸を取り除き片方を冷凍にし、片方は生のまま保存します。(取り除いた軸は勿体無いので加熱して干し椎茸に加工しました、。後ででてきます。)
冷凍して生と並べたところです。
左が冷凍で、右が生
冷凍は少しテカっています。とりあえず焼きます。(グリルが汚いのはごめんなさい)
このような感じで中程に同じようにならべ、火にかけます。
2分後、全体が温まったようです。右の生はあまり変化はありませんが左の冷凍は周りがしっとりしたように見えます。
5分後、どちらも加熱されているのがわかります。冷凍は水分が抜けたような感じでシワが出てきています。
8分後完成、生は軸のところに焦げができています。冷凍は見た目でわかる通り汁が出ています。
皿に乗せたところ、冷凍した方が傘のところのシワが多いです。
別角度で撮影、冷凍は軸のところに汁が盛り上がっています。
反対から撮影、右が冷凍です。
味の違い
生は歯ごたえがあるいつもの味です。もう少し加熱すると冷凍のように汁が出てくると思いますが溢れるほどは出ないと思います。
冷凍は汁が出ているせいかジューシーな感じ、生と比べると柔らかいが煮込んだくらいの固さなのであまり柔らかすぎるというわけではない。汁が出ているのに味が濃いように思うがしいたけ特有のいわゆるしいたけの匂いが強く、しいたけが苦手な人は好まないかもしれない。
焼いた時の味の違いは生はさっぱりで歯ごたえを味わう。冷凍はしいたけのうま味を味わうのに適していると思う。
煮る
先ほどと同じですが形が比較的揃ったしいたけを買ってきます。同じような形と大きさのものをペアにして片方を冷凍にし、片方は生のまま保存します。
(画像省略)
冷凍と生を2つずつ用意し、鍋に水、酒、醤油、砂糖を入れよく混ぜてからしいたけを入れ火にかけます。
液体につけると分からなくなるのでようじを刺しました。わかりにくいですがようじの末端が折れているのが冷凍(中央2つ)で何もしていないのが生(左右2つ)です。
少し汁が足りないような、、、
とりあえず、火が通り少し柔らかくなるくらい煮ました。
右が冷凍、左が生です。
見た目はそれほど変わりません
味の違い
焼いた時と同じような結果で生は歯ごたえがあり、さっぱりした味です。
冷凍は生と比べると非常に味がしみています。うま味はあると思いますが生とそれほど変わりはないように思えます。しかしそれと同時にしいたけ特有の匂いが強く出ています。生よりは柔らかく、よく煮込んだくらいの固さになっている。
煮た時の味の違いは生は焼きと同じでさっぱりで歯ごたえを味わう。冷凍は味の染みやすさと柔らかさを味わうのに適していると思う。特に味の染みやすさは軸まで味が染みていた。
A.まとめ、結果
生と冷凍での違いは
生は歯ごたえを残した具にした時、しいたけの匂いが苦手な時に使う。
冷凍は素早く調理したい時、味を濃くしたい時に使うのがいいと思います。
好みにもよりますがしいたけに匂いが嫌いでなければ冷凍した方が保存もできて、味も濃くなるのでオススメです。しかし注意としては味がしみやすいので煮物にするときは最初に入れてしまうと他のものに味がしみる間に味が濃くなりすぎてしまうので入れる順番を変える必要があります。また冷凍すると切ることができなくなるため冷凍する前に切ってから冷凍しなければいけません。
B.生ではだじが出ないが冷凍をすればだしが出るのか。
比較のためスライスの干し椎茸を買ってきました。
右が生をスライスして冷凍したもの、左が買ってきた干し椎茸です。重さで同じ量にすると比較できないので見た目(体積)で同じくらい用意しました。(実際は戻してみたら干し椎茸の方が多かったように思えます。)重さは冷凍8g、干し椎茸3gです。
こちらはついでですが先ほどの実験で余った軸の部分を半分に切って120℃のトースターで20分程度加熱しました。水分が抜けてカラッカラになってます。これも3g用意します。
3種のしいたけのだしを取るためそれぞれ100mlの冷水に入れ冷蔵庫で12時間保存します。
12時間後の干し椎茸、色が濃く出ています。
12時間後の冷凍しいたけ、思ったよりも色が出ています。
12時間後の手作り軸干し椎茸、色は出ていますが冷凍よりも薄いです。
そのまま味見
このまま味見をしていきます。小さじ1杯ずつすくいそれぞれ小皿に移していき味をみます。スプーンは毎回水ですすぎます。
まず見た目、色が一番出ているのは市販のものでしたが画像でわかる通り吸水後の体積がかなり増えたため冷凍よりも分量が多いかもしれません、次に冷凍しいたけで意外と色が出ています。もともと水分は減っていないので水に入れても体積はあまり変わっていません。最後に手作りの干し椎茸で軸て作っているためが色の出かたがよくありません。また吸水後も市販もものほど大きさに変化はないです。
次に香りです。匂いが一番強かったのは意外と冷凍しいたけでした。しいたけの香りがよくしました。次に市販の干し椎茸で香りはよく出ていますが冷凍よりも少し弱い感じでした。しかし冷凍の匂いと少し違い乾燥したような匂いが混ざっているため弱く感じたのかもしれません。最後は手作りの干し椎茸で全体的に匂いは弱かったです。
そして味、あまり匂いを感じないように味をみます。順位をつけると市販の干し椎茸、冷凍、手作りの順番です。
干し =しいたけの味がよく出ている、舌の奥でうま味が広がるようだった。
冷凍 =干しと同じくらいしいたけの味はよく出ている。しかしうま味は広がるほど出ていないようだった。
手作り=しいたけの味が弱い。うま味はあるようだがこれも弱い。
12時間つけただけのだしの感想はこのような感じで冷凍のしいたけが思ったよりも香り、味が出ていました。手作りはもともと栄養を送るための軸を使っているため、あまり成分がなく全体的に弱いのだと思います。
グアニル酸を生成
次に火にかけてグアニル酸を生成してみます。
同時に加熱して温度をすぐに70℃になるようにして10分温度を保ったまま加熱していきます。10分後。90℃くらいまで温度を上げ5分加熱して完成。元の器に戻します。
(ガス台が汚くてすみません。)
出来上がりがこちら。市販の干し椎茸です。
こちらは冷凍のしいたけ
手作りの干し椎茸
並べます。
水分が減少したためか加熱前より色が濃くなっています。しいたけ自体は干しているものは少し膨らんでいますが冷凍はあまり変化はありません。
加熱して味見
見た目ですが共通して色が濃くなっていますが濃さの順位は同じで干し椎茸、冷凍、手作りの順番です。しかし冷凍の茶色っぽい色に対して市販の干し椎茸はこはく色のような色合いをしています。
香りも順位は同じで冷凍、干し椎茸、手作りの順番ですがこちらは全て香りが弱くなっています。手作りに関してはしいたけに匂いがわからないくらい弱くなっていました。これは加熱と水分蒸発により香りの成分が分解、揮発してしまったためと思われます。
味はこれも順位をつけると同じで干し椎茸、冷凍、手作りの順番ですが加熱後に劇的な変化がありました。
干し =圧倒的にしいたけの味が出ていて味がとても濃い、加熱前よりもさらに舌の奥でうま味が感じられうま味が残る印象があった。塩味が付いているような感じでこれだけでスープとして飲める濃さが出ている。
冷凍 =加熱前よりはしいたけの味は出ていて、うま味も強くはなっているようだが加熱前の干し椎茸ほどは出ていない。
手作り=変わらずしいたけの味が弱いがうま味は舌に残るくらい出ていた。
12時間水につけた後、適切な温度で加熱した場合は市販のものが圧倒的にうま味、味ともによく出ていました。冷凍はうま味が出ないことはないがだしとして使えるほどは出ないようです。試しに作った手作りに干し椎茸は軸にためか味が出ませんでしたが加熱をすることによってうま味であるグアニル酸が作られているようでした。
加熱して冷やす
次はこのまま冷やしてみます。すでに加熱してあるのでうま味の増減はほぼないと思われますが味の感じ方の変化をみてみます。
(特に見た目で変化がないので画像はありません)
特に見た目と香りの変化はありませんでした。
味の感じ方の変化は
干し =温かい時よりも味が濃く感じます。うま味も感じられます。
冷凍 =これも少し濃く感じます。うま味も感じられます。
手作り=冷凍よりも味が弱く感じられる。
冷やすことによりあまり変化はないが味は濃く感じるようでした。
B.まとめ、結果
テーマはしいたけは冷凍をすればだしが出るのか。なので実験からすれば冷凍すれば生のしいたけでもだしは出ます。しかし結果的にはだし汁として使うには味が弱いためお吸い物などで具として、しいたけを入れるなら冷凍した方が味がいいという程度のものだと思ってください。
しいたけのだしを取りたい場合は市販の干し椎茸が一番よく味が出て、適切に加熱すればかなりのうま味を出せることがわかりました。手作りは軸で作ったため味が弱かったですが傘の部分で作ればそれなりにだしは出ると思います。しかし作る手間が多くコストを考えれは買った方が安上がりだと思います。
水につけただけでもだしはかなり出るのでしいたけの香りを生かしたい料理の場合は加熱しないで調理し、香りは生かさずだしを濃くしたいのであれば加熱をするといいでしょう。