食中毒を起こさない低温調理の最適な温度と時間

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低温調理の安全管理

調理での食中毒予防のための加熱は75℃以上1分以上とされています。これはほぼ全ての食中毒の原因微生物が安全レベルまで死滅する温度と時間です。

しかし低温調理では肉のタンパク質が変性し固くなる温度の66℃以下で調理をするため、75℃以上1分以上の加熱と同等の殺菌効果のある温度と時間で加熱する必要があります。

細菌の増殖可能温度

主な食中毒原因微生物の増殖可能な温度帯です。この温度帯以外では微生物が増殖することが難しく食中毒の発生を抑えることができます。温度帯の範囲では増殖が激しくなり場合によっては数時間で食中毒になる可能性があります。

カンピロバクター 30〜46℃

サルモネラ 5〜46℃

腸炎ビブリオ 10〜43℃

黄色ブドウ球菌 7〜48℃

ウエルシュ菌 10〜48℃

ボツリヌス菌 10〜48℃

セレウス菌 10〜48℃

リステリア 0〜45℃

エルシニア 0〜44℃

腸管出血系大腸菌(O157) 7〜46℃

低温調理ではこの温度帯以上の温度に速やかに上げる必要があります。

原因微生物の死滅温度

上記の増殖可能温度を見ると、どの原因微生物も50℃以上では増殖がしにくくなります。しかし50℃では増殖しにくくなるだけで多くの原因微生物は死滅させることはできません。では何℃から死滅することができるかというと食品微生物の本などには書いていないのですが厚生労働省が規定している特定加熱食肉製品の製造基準における殺菌方法に記載がありました。

特定加熱食肉製品とはある一定の成分規格と製造基準を満たした加熱する食肉製品のことで様々な規定があり、その一つに加熱殺菌の時間と温度が書いてあります。

主な規定を羅列すると

  • 食肉の温度が10℃を超えてはいけない。
  • 調味料等を使用する場合には、食肉の表面にのみ塗布しなければならない。
  • 肉塊のままでなければならない。
  • 中心部を規定の時間と温度で加熱するか同等以上の効力がある殺菌方法をしなければならない。
  • 加熱中は中心部の温度が35℃〜52℃の状態を170分以内にしなければならない。
  • 加熱殺菌後の冷却は、衛生的な場所において十分行わなければならない。
  • 加熱殺菌後は中心部の温度が25℃〜55℃の状態を200分以にとしなければならない。

規定される加熱時の中心部の時間と温度は次の通りです。

55℃:97分

56℃:64分

57℃:43分

58℃:28分

59℃:19分

60℃:12分

61℃:9分

62℃:6分

63℃:瞬時

この時間と温度を見ると55℃以上の温度であれば時間をかければ、ほとんどの食中毒原因微生物は死滅すると考えられます。

その他の製造基準

特定加熱食肉製品と同じように加熱食肉製品という製造基準もあります。

この加熱食肉製品は特定加熱食肉製品の規格を満たさないが、ある一定の成分規格と製造基準を満たした加熱する食肉製品のことで、ざっくりと言えば特定加熱食肉製品よりも規定が簡易的な加熱する食肉製品であり、主にソーセージなどのミンチ肉などが対象になります。簡易的と言っても加熱殺菌自体は特定加熱食肉製品よりも厳しく同じ温度でも長時間加熱が必要になります。(中心温度63℃であれば30分の加熱が必要。)

他にも特定加熱食肉製品、加熱食肉製品の規定に入らない食材の加熱殺菌条件はクジラ肉製品63℃30分、乳、乳製品63℃30分、アイスクリーム原料68℃30分などがあります。

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低温調理での加熱温度

低温調理をする場合の加熱温度は先ほどの特定加熱食肉製品に規定されている温度と時間で中心部を加熱すれば問題ありません。間違えてはいけないのがお湯に入れてから時間を計るのではなく、お湯に入れ食材の中心温度が規定の温度になってから時間を計ります。厚みがあまりない食材であれば直接袋の上から触り確かめればわかると思いますがある程度厚みがあるものは温度計と内部に刺して中心の温度を確認してください。また厚みのあるものは必ず切りこみなどのないブロック状の肉(ササミなども含む)を使用しないと内部に細菌がいる可能性があるため、その場合は特定加熱食肉製品に規定されている時間では殺菌が不十分となることがあります。

注意点

正しく加熱が出来ていれば、ほとんどの食中毒原因微生物を死滅させることができますが例外でセレウス菌、ウエルシュ菌、ボツリヌス菌などが形成する芽胞の状態では通常の加熱では死滅しません。しかし芽胞を形成する菌は毒素による食中毒を起こすため毒素がなければ菌が残っていても問題はありません。また芽胞は加熱後急速な冷却と冷蔵保存により10℃以下で発芽(毒素を出すようなる。)、4℃以下で増殖を抑制することができます。(芽胞を死滅させるには126℃で20分の加熱が必要との報告がある。)

そのため低温調理では必ず細菌や毒素が増えていない新鮮な食材を使い、素早く調理することが重要です。

また低温調理後は0〜3度で保存し7日以内に消費することが推奨されています。

終わりに

低温調理は正しい温度と時間で調理すれば安全に調理することができます。しかし正しく調理ができたとしても、その後の保存で食中毒原因微生物の増殖可能な温度帯に置いてしまえば様々なところから付着した菌がすぐに増殖してしまいます。そのため低温調理だけではないですが調理をしたらすぐに食べるか急速冷却して冷蔵庫で保存することで食中毒のリスクをより減らすことができます。

食中毒予防の知識を記事にしました。

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